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アメリカが象牙の取引を全面禁止!密猟根絶へ向けた大統領令を発令

      2016/04/26

野生の象

これは2013年のニュースなのですが、現在に続く重要な出来事となっています。

アメリカが、国内での象牙の商取引をほぼ全面的に禁止し、海外からの商業的輸入も完全に禁止したそうです!

引用記事
US bans commercial ivory trade

Obama to launch major initiative to curb wildlife trafficking

このニュースを聞いて、「え、象牙って既にワシントン条約で禁止されてたんじゃなかったの?」と思われるかもしれませんが、ワシントン条約で象牙の国際的な取引は禁止されているものの、実際には各国の法で”抜け穴”が存在し、アメリカでもこれまでは法の抜け目を利用し象牙の売買が行われていたそうです。

しかし今回、オバマ大統領は象の乱獲と闇市場を根絶すべく、象牙の商業輸入(研究目的や個人使用、特定の楽器は除く)を全面的に禁止し、既に国内で流通している象牙の取引も禁止すると発表しました!

大量の違法象牙

中国の台頭で再燃する違法象牙市場

象牙取引の歴史を見てみると、1989年にワシントン条約で禁止されるまでは深刻な増加傾向にありましたが、その後は条約の効果もあって一時減少したそうです。
しかし、中国やベトナムといったアジアの新興国の台頭によって、再び象牙の需要が増し、現在はまたもや違法な象牙取引が横行している状況です。

サイの密猟数のグラフ

サイの密猟数のグラフ。 サイもゾウと同じく、角を狙われる深刻な密猟に晒されている。 2007年〜2014年で9,300%も増加 http://www.wwf.or.jp/activities/2015/02/1247006.html

2013年、違法取引根絶へ向けた大統領令発令

こうした状況を受けて、オバマ大統領は2013年のアフリカ歴訪時に、「ゾウ、サイ、猿人類、トラ、サメ、マグロ、亀といった指定保護動物が生き残ることは、全ての国にとって経済的、社会的、そして環境面でも恩恵がある。保護動物の違法取引は、そうした恩恵を削り、何十億ドルもの違法な資金源を毎年生んでおり、闇市場を構築して社会の治安と安定を脅かしている。」として、野生動物の違法取引根絶へ向けた大統領令を発令しました。

アフリカ諸国に密猟防止へ向けた資金提供

この大統領令では、1000万ドル(約12億円)の予算が組まれ、タンザニア、南アフリカ、ケニアといったアフリカ諸国の警察官やパークレンジャーを野生動物の保護へ向けて訓練するそうです。
また、タスクフォームも結成され、年間100億ドル(約1兆2千億円)と言われる密猟や違法取引の市場をいかに根絶するかという対策が練られるそうです。

密猟された象牙を燃やすレンジャー

http://www.afpbb.com/articles/-/3041467 (c)AFP/Carl de Souza

ケニア・ナイロビ国立公園で、積み上げられた約15トンの象牙の焼却処分に当たるケニア野生生物公社の職員(2015年3月3日撮影)

動物保護だけの問題ではない。世界の治安に影響

大統領令では、野生動物の乱獲は動物愛護の視点から問題であるだけでなく、象牙などの闇取引が犯罪組織の資金源となり、国際的な治安問題にも繋がると言及しています。
アメリカ国務省アフリカ担当官のGrant Harris氏は、「犯罪組織が勢力を伸ばす裏には、ナイトゴーグルとライフル銃を持った密猟者たちがいて、象牙やサイの角を売買して資金源とする反政府組織がいるのです。」と指摘しています。

国連も、2013年の初頭に、違法な象牙の取引が中央アフリカにおける反政府組織の資金源となっていると判断しており、「今回の大統領令は野生動物の違法取引に関する世界の注目を、単なる環境問題という枠から世界的な治安の問題という次元に広げた。」と政府関係者は語っています。

下記グラフは、国別の象牙押収量。

象牙の密輸量

http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20120928/324962/?webSp=poaching

その延長線上にある今回の象牙取引禁止措置

今回のアメリカにおける象牙取引の全面的禁止措置は、この2013年の大統領令から続くオバマ政権の密猟根絶へ向けた具体的行動の一つだと言え、ここ10年での違法取引の増加を危惧していた保護団体からは支持を受けており、世界自然保護基金(WWF)のカーター・ロバーツ代表は、オバマ大統領の施策は象牙の違法取引根絶へ向けた大きな前進をもたらすと語っています。

しかし、別の場面ではオバマ政権が全く動物保護を目指していないという指摘があり、TPPにおける問題点が挙げられています。

TPP草案では環境保護項目に強制力がない

2014年初頭、ウィキリークスがTPP交渉の内部文書をリークし、世界に衝撃を与えましたが、TPPの草案となるその内部文書を精査すると、自然界の生態系を維持するための環境保護項目が全く強制力を持っていないことが分かり、先述のロバーツ氏は、

「(条文案には)法的強制力のある環境保全策が欠落している。交渉各国は、自然環境を保護し、再生可能で持続可能な資源の合法的取引を支援できる絶好の機会を、みすみす逃そうとしている」
出典:「TPPの環境分野内部文書」をウィキリークスが公開

と批判し、シエラクラブのマイケル・ブルーン事務局長も、

「この条文案は、海洋環境、水産資源、野生生物、森林などを保護するわれわれの取り組みを、ひとつ残らず挫く内容だ。それどころか、過去に結ばれた自由貿易協定における進展を後退させるだろう」
出典:「TPPの環境分野内部文書」をウィキリークスが公開

として、「ブッシュ政権を下回る」と批判しています。

これに対し、米国通商代表部は、

「環境スチュワードシップ(自然環境の責任ある管理)は米国が重視する基本的価値観であり、断固とした完全な強制力のある環境条項がTPPに加えられるよう主張していく。これが実現しない限り合意することはない」
出典:TPPに4つの危惧、環境団体が表明

と反論していますが、「【TPP】【拡散】 TPP協定文書の分析が発表された 」という記事によると、2015年10月に大筋合意された協定文書では、どうやら環境保護項目は他の通称条約に比べて劣る内容となっているようです。

ただ、TPPでは、環境保護項目に対して各国がそれぞれの利権を主張しているので、アメリカだけの問題ではなさそうです。

いずれにしても、オバマ政権の動物保護に対する姿勢が、今後実を結ぶと良いですね!

日本は世界最大の象牙輸入国だった

押収された象牙

(c)AFP/Getty Images/Doug Pensinger

ちなみに、日本の象牙規制はどうなっているかというと、日本には象牙を印鑑として使う習慣があり、1989年のワシントン条約時、日本は世界最大の象牙輸入国だったそうです。
1970年〜1989年に日本が輸入した象牙は5,000トンに上り、なんと象25万頭分に相当するそうです!
まさに日本は、世界の象牙市場を後押ししてきました。

そして、1989年のワシントン条約で象牙の国際取引が禁止されたわけですが、日本はその後も象牙の輸入を再開できるよう積極的にロビー活動を続け、1999年には50トンの輸入許可をとりつけ、2009年には再び39トンの輸入が許可されたそうです。

このように特別に象牙輸入が許可された国は、世界で唯一日本だけだったとか・・・。

この間日本は、国内における違法な象牙取引はきちんと取り締まっているとアピールしていたそうですが、今ではその取り締まりが全く中身のないものであることが判明ており、アメリカの非営利団体「エンバイロンメンタル・インベスティゲーション・エージェンシー(EIA)」は、

「日本の制度は抜け穴だらけであり、法規制が弱いために効力が乏しく、最も基本的なレベルにおいてさえ有効な歯止めが存在しない」
出典:日本で違法な象牙取引が横行、覆面調査でも確認

と批判しています。

ちなみに、どういう抜け穴なのかというと、象牙の輸入業者が、「この象牙は合法的に輸入した」という書面を自分で作れば、それだけで審査に通るんだとか・・・。

こうした状況を受けて、日本の象牙輸入は2009年以降許可されていませんが、なぜか象牙の登録数は2010年に500本だったのが2014年には1,900本に増加しており、ヤフージャパンで取引される象牙の売り上げ金額も200万ドルから700万ドルに増えているそうです・・・。

捕鯨問題などで他国から批判をうけることの多い日本ですが、さすがに象牙問題は弁解の余地がなさそうですね!

環境省は、象牙等はルールを守って取引しましょう!というページを開設しています。

動物保護はちゃんと実を結ぶ。今後に期待!

熊の親子

まだまだ課題の多い野生動物の違法取引問題ですが、一方で地道な動物保護活動はたしかに成果を上げており、ヨーロッパではタイリクオオカミが4倍、ヒグマが2倍、バイソンやビーバーなどは数百倍から数千倍に個体数を回復しているそうです!

ヨーロッパの野生動物が個体数を回復!近年の動物保護活動が成果をもたらす

小さな活動が相まって、どんどん生態系の保護が進んでいくと良いですね!

引用記事
US bans commercial ivory trade

Obama to launch major initiative to curb wildlife trafficking

参考記事
アメリカ、象牙取引の取締まりを強化

日本で違法な象牙取引が横行、覆面調査でも確認

ワシントン条約と象牙取引
TPPに4つの危惧、環境団体が表明
「TPPの環境分野内部文書」をウィキリークスが公開
【TPP】【拡散】 TPP協定文書の分析が発表された

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